こんにちは。
CONPATHライターの山崎です。
海外経験を積みたい学生のみなさんに留学、海外インターン経験者各3名の体験談を紹介しています。本日は海外インターン編第2弾を紹介します。前回の記事をまだ読んでいない方はこちらからどうぞ。
就職活動を終え大学を卒業するまでの長くて貴重な時間に何をしようかと迷っている人は多いのではないでしょうか。現在、商社の環境省エネ事業部で海外の生産工場立ち上げのお仕事をされている甲斐 雄一郎(かい ゆういちろう)さんは、工学部を卒業後イギリスの大学院で開発学を学びました。帰国後就職活動を終え、国内の様々な企業で短期のインターンをしていました。そしてたまたま参加したインターン募集のイベントでカンボジアでのインターンを発見し参加することにします。内定後の半年を利用して行った甲斐さんの海外インターンはどのようなものだったのでしょうか。インタビューをしてその体験談をまとめました。
イギリスのマンチェスター大学院での留学を終え、帰国後の就職活動で商社の内定を得た甲斐さん。「企業の組織構造に関して広い視野を持って働くために組織で働く経験を積みたい」という理由で、内定後は様々な企業で短期のインターンをしていました。そして、インターンを探す中でたまたま参加したイベントで、かものはしプロジェクト*の学生インターン募集を知ります。友人に連れられて参加したスタディツアーで国際協力に興味をもち、「将来途上国の農村部に住み出稼ぎなどで過酷な労働に甘んじなければならない若い人たちを支援する仕組みを作りたい」と願っていた甲斐さんにとって、かものはしプロジェクトでの海外インターンはまさにその願いを叶えるものでした。「自分がしたかったことはこれだ!」と確信しすぐに参加を決意します。
*子どもが売られない世界をつくることを目指して活動する認定NPO法人。活動国の1つであるカンボジアでは農村地域に雇用を創出している。
かものはしプロジェクトのインターンでは主にカンボジアの農村部で活動することになります。「インターン中の仕事は主に工房の生産管理システムの構築と導入でした。女性たちが旅行者向けに民芸品を生産・販売しているので、その商品の生産数や生産時間を管理するシステムの構築と導入をメインに行っていました」
甲斐さんは次の2つのことを目標としてインターンをしていたそうです。「1つは途上国で海外の人と働くということ。そしてもう1つは現地の人の生の声を聞くことです。海外インターンは業務を通して職務経験も積めるし、滞在先の国についての文化・慣習・人を深く知れるチャンスだと思います。短期的な滞在だとそれぞれの国の一部分しか知ることができず、その国の実情とは程遠い見せ物としての観光名所しか巡れないと思います」
「実際にインターンをしてみて困難だったのは成果を残すことでした」と振り返る甲斐さん。「特に半年間という短い時間で成果を出すことは難しかったです。生産管理システムの構築・導入までは行きましたが、インターンが終わってもう一度現地に行ってみるとそのシステムは使われていませんでした。生産管理システムでは、カンボジア人スタッフが必要な情報を取得できるような使いやすい仕組みを構築することが必要でした。大学の学部生の時にシステムの勉強はしていましたが、自分は実務経験のない素人なわけで、半年で終わる仕事ではないなっていうのはインターンの途中から感じていました」
それでも海外インターンの前に立てた目標を達成できたと甲斐さんは言います。途上国で異文化の人と働くことに関しては、「海外ではミスコミュニケーションは発生する前提で物事を進めないと、方向性が大きく異なった成果物が出来てしまいます。なので、システム構築の際には必要以上に現地スタッフに対して方向性を共有したり、システムの課題に対する相談を行いました。例えば、自分が作るシステムはカンボジア人が使うものなので、彼らの意見を聞かないといけない。この機能はいるいらないって。そういうフィードバックをもらわないといけないんですけど、適当にフィードバックが欲しいって投げても評価してもらえないんです。だから自分がフォーマットや共有する仕組みを作って、システムの使い勝手を彼らにきちんと評価してもらい、システムの完成に繋げることができました」
また、カンボジアでのインターンの経験で、現在のお仕事にも生きていることが2つあると甲斐さんは言います。1つは「カンボジア人から自発的に報告してもらう仕組みを整える経験を通して、『納期内に仕事を仕上げるテクニック』が磨けたと思います。カンボジア人に仕事を依頼しても、自分がフォローしないと完了されないことが多くありました。例えば彼らが分からない事があったときや期限に間に合わないときは、ExcelやWordに発生した問題や分からない事をまとめられるフォーマットを作ってDropbox上で共有してもらうよう働きかけました」と振り返ります。
もう1つは「東南アジア=甲斐という社内でのブランドです。今はベトナム主担当として業務を行っています。カンボジアでインターンをしたことを常日頃から会社で話す機会があったので、上司を含めみんな私がカンボジアに半年いたということを認識してくれています。カンボジア語を話して生活した経験がある人っていうブランドが定着していますし、自分の中でも現地化できるっていう自信があります。学生インターンとして途上国で半年くらい住んでいましたっていう人は会社の中でもレアですね。自分としてもベトナムを希望していたというのもあってベトナムでやってみろっていう感じで担当に選ばれました」
海外インターンでは働く経験を得ただけでなく現地の人たちの心の声を聞くこともできたと甲斐さんは言います。「インターンをすることで言葉を覚えないといけません。言葉を覚えてから農村に行くことで、生の声が聞けました。農村の良し悪しがより見えたかなって。今までは第三者視点から良い部分しか見えなかった。でも長く現地に住む事によって良いことばっかりじゃないなって思いました。例えば、農村にずっといることはつまらない時もあるんだなって笑。海外インターンをする前まではただ漠然と東南アジアに住みたいと思っていましたが、本当にそうなのかなって考える機会にもなりましたし、自分が居たい場所だなっていうことを再確認できました。みんな家族みたいで血も繋がってないけど行ったら『おかえり』と言ってもらえる関係性が、日本と違って良いなと思います。世界に自分の家みたいな『帰る場所』があるのって良いなって。もちろんその人たちは仕事はそこそこあるけれど安定はしていない。なかなか子供に栄養のあるものを食べさせられない等の課題があるので、そういうところを今後手助けできればと考えています」
現在は日本で働くことがほとんで東南アジアで働く機会は少ないと言う甲斐さん。途上国の農村でお仕事をするために今後の目標を語ります。「短期的には今のベトナムでの生産工場の立ち上げ事業を4〜5ヶ月くらいで終わらせたいと思っています。今は経験値として海外で仕事をしましたっていう経歴がほしいと思っています。そのために立ち上げ業務に専念して、ある程度できたねっていうところまで持っていきたいです。それを踏まえて中期的なプランとして半年後にはアジアの農村に仕事を作りたいなって思っています。途上国の農村でやるべきことや現地の人がやりたいことはあると思います。それを今後見つけて行かないとなと思います」
甲斐さんのカンボジアでのインターン経験はいかがでしたでしょうか。内定後の時間を海外で働く経験を積むために海外インターンを選択した甲斐さん。海外で一度働いてみたいと考える学生にとって、まとまった時間が取れる内定後の期間は絶好のチャンスではないでしょうか。その期間を利用してあなたも海外インターンをしてみませんか?
総合評価 | 90点 – 目標である途上国で働く経験ができた – 現地の人の生の声が聞けた |
海外インターンシップ先と時期およびその目的 | 認定NPO法人かものはしプロジェクト 2012年10月~2013年3月 途上国で働く経験を得るため 現地で生の声を聞くため |
費用 | 合計22万円 内訳: – 渡航費6万円 – 住居費4万円(ホテル暮らし2ヶ月分) – 食費12万円 |
治安や生活 | アジア圏での様々な短期滞在の結果生活には慣れていた |
言語・コミュニケーション | 英語での業務に加えカンボジア語も学ぶ |
就職活動への影響 | 内定後インターンのためなし |
就職後の影響 | ①納期内に業務を完了させるテクニック ②社内での東南アジア=甲斐という肩書き |
気づきや学び | ①期間が定まった海外インターンで成果を出す難しさ |
CONPATHでは大学生のうちに海外で長期の経験をしてみたいけれど何が自分に合っているかと迷っている学生のみなさんに、留学・海外インターンを経験した各3名のリアルな体験談を紹介しています。
甲斐さん以外の留学・海外インターン経験者の体験談を読みたい方はこちらからご覧ください。
甲斐さんのイギリス留学についての体験談はこちら。甲斐さんが「人生の師匠」と呼ぶ方との出会いがあったそうです。
こちらは甲斐さん自身に寄稿していただいた、カンボジアでインターンを参加した理由に関して言及している記事です。本インタビュー記事の1年前に執筆していただいたため、本記事と合わせて読むとより海外インターンのメリット・デメリットが分かると思います。
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