休学して海外インターンをしてもやりたいことが見つからなかった

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by 山崎 達夫

最近は休学しやすくなり、就職活動のために休学して海外インターンをする人も増えてきています。海外インターンをしたことで卒業後やりたいことが見えたという意見をよく目にしますが、本当にそうなのでしょうか?

今回インタビューした鈴木謙史さんは、シンガポールでインターンシップに参加した後もやりたいことが見つからなかったと言います。

海外インターンを通じて将来やりたいことを見つけたいと考えている人はぜひ参考にしてみてください。

記事の最後には今回のインターンの目的やかかった金額、鈴木さん自身のインターンシップに対する総合評価などを一覧にして載せています。そちらも参考にしてください。

初めての海外がインターンシップ

First time abroad is for internship

山崎:まずどのような海外インターンをされたのか教えてください。

鈴木さん:大学3年生が終わって、4年生の春から秋にかけてシンガポールにある企業でインターンシップをしていました。子どもたちにサッカーを教えるアカデミー事業をメインに、大人のためのフットサルを運営したり、サッカーイベントを開いたり、企業のCSR活動のお手伝いとしてサッカーを絡めて行ったり、サッカー関連の商品の販売をしたりとサッカーを中心にいろんな事業を展開しています。社員が少ない企業だったので、これらの業務全てに関わっていました。

ありがとうございます。もともとサッカーに興味を持たれていたそうですが、なぜ海外インターンをしようと考えたのですか?

あまり就職活動に身が入らなかったことが大きいです。大学3年生で就職活動が始まってシェアハウスの友人が真剣に将来を考え始めたときに、自分も将来のことを考えて興味のあるスポーツ業界やサッカー業界に入りたいと思って就職活動を始めました。ところが、全然良い会社が見つからなくて、就活に身が入らなかったんです。他に選択肢がないかなーといろいろ探し始めたときに、登録していたメルマガにたまたまシンガポールでのインターン募集が流れてきました。すぐに行こうとは思わなかったんですが、1ヶ月経ってもどうも就職活動にモチベーションが上がらなくて、就職活動をやめて真っさらな気持ちでやりたいことを純粋に探してみた。その結果がシンガポールのインターンに繋がったんだと思います。

シンガポールでのインターンシップが初めての海外経験だったのですが、海外サッカーが好きだった影響で海外志向が強く、「海外に住みたい、働いてみたい」という気持ちはありました。その気持ちとスポーツ業界・サッカー業界に進みたいという自分のニーズに合ったものにたまたま出会えたんだと思います。

海外インターンが初めての海外経験っていうのは面白いですね。初めての海外経験がインターンシップとなればハードルは高いと思うのですが、不安とかは無かったんですか?

うーん、あんまりなかったですね。もともと海外旅行には興味がなくて、どちらかというと海外に住みたいという気持ちを強く持っていました。だから海外に住んでいるイメージはあったし、住めると思うとウキウキ・ワクワクで。シンガポールでインターンをしたら、どんなことがあるんだろうという思いが強かったです。会社のサポートもあって面倒も見てくれるし、好きなサッカーをできる環境があれば、後はなんとかなるだろうと。大雑把とかいい加減な性格もあって小さなことは気にしなかったです。あとはインターンをする前にインターン先やメルマガの配信元に企業の現状やインターンでどんな業務があるのか、どんなことができるのかをしっかり聞くことができたのは大きかったかもしれないです。それとインターン先の国がシンガポールだったので気が楽でした。これがカンボジアとかインドだったらかなり不安になっていたかもしれないです笑。

確かにインドやカンボジアでは治安や食生活に関して不安がありそうですが、シンガポールでは無さそうですね笑。一方で、シンガポールで働くとなると英語が話せないと大変そうです。コミュニケーションに関して問題はありませんでしたか? 準備等大変だったのではないですか?

言語に関しては全く準備しませんでした。インターンをしようと思ってから、シンガポールに実際に行くまで1ヶ月しかなかったので笑。だから英語に関してはほとんど何も準備していません。もともと英語が一番の苦手教科で、TOEICとかTOEFLの試験も受けたことがありませんでした。だから英語力はゼロの状態でシンガポールに行きました。インターン中は日本人の子どもたちにサッカーを教えることが多く、英語を使うのは現地のスタッフと話す時ぐらいでした。なので英語を使う頻度はそもそも多くありませんでした。僕のインターンシップは、英語を使えなくても価値が出せる仕事だったんだと思います。それでも英語ができることに越したことはないので、今海外インターンをしようかなと思っている人は英語を勉強しておいた方が良いと思います。

海外インターン後も模索し続けたことで見つかった、企業選びにおける3つ基準

海外インターンでも業務で必ずしも英語を使うわけではないということですね。シンガポールでのインターンは、その後の就職活動にどう影響しましたか?

シンガポールでインターンをしてみても、結局やりたいことは見つかりませんでした。インターンのゴールを設けていなかったから見つからなかったのかもしれません。インターンが終わった後も自分が何をやりたいのかわからなかった。だったらと思って帰国後は全く違う職種・業界も経験してみようと思い、Web系の会社でアルバイトもしていました。海外インターンを終えてからも試行錯誤していく内に、インターンした会社って良い所だなってわかりました。インターンをしただけでは分からなかったです。でもインターンの経験があったからこそ比較ができるようになったと思います。もう一度就職活動を始めたときに、当時を振り返ると自分の中で会社を選ぶ基準ができたので、なんとなく会社を探すのではなく「こういうところに入りたい」と会社を絞り込むことができた。でも結局日本に自分が働きたい会社はなかった。だったら違うところで働こうと考えていたときに、インターン先から就職のオファーをもらったので、そこで働くことに決めました。

シンガポールで海外インターンをしたことと、日本に返ってからも継続して進路を模索したことで会社選びの基準ができたんですね。その基準を教えていただけますか?

まず1つ目は、業務内容として現場レベルでスポーツ・サッカーに携われるところ。スポーツ用品を売る販売員のような仕事ではなくて、スポーツ・サッカーを好きで頑張っている人とダイレクトに関われるところが良かった。

2つ目は、新人でも自由に動けるような組織風土があるところ。自分がある程いろんな提案をできて、いろんなことができるような風土があるようなところ。僕がインターンをしていた会社は、提案をしてくれという風にすごくウェルカムな雰囲気で、それが働いていてすごく気持ち良かったし楽しかった。

3つ目は一緒に働いてみたいという魅力的な人がいるところ。海外インターン中に人との繋がりが仕事を作ることを間近で見ることができたので、人って大事だなと思いました。

1つ目に関して、スポーツ業界の中でサッカーにダイレクトで関われる場所が良いなと感じたのは、インターン中に何かきっかけがあったのですか?

自分のキャリアプランを考えるに当たって、現場レベルから仕事を始める方がいいなと感じたんです。現場からキャリアを積み上げていく方が現場で働く人たちの苦しみもわかるし、絶対タメになると思って。現場のことを知っている人たちっていろんなことに気配りがきくし重宝される。それを自分も経験してやっていきたい。いろんな人と関われるし、何より楽しいと思います。

そういう風なキャリアの積み方をしたいなと思ったのはどうしてですか?

僕自身が頭ごなしに言われることが嫌いっていうのがあります。学生団体や部活で活動している時から、自分の状況を何も知らずに「じゃあこれやってね」って投げやりに言われるのが嫌いだったし、自分と同じ目線になれない人と一緒に働くのは好きじゃないからかな。

なるほど。インターンを経てどういう人や風土で働きたいかも明確にできたということですね。鈴木さんの場合、インターンされていた会社にそのまま就職されていますが、インターンの経験は今のお仕事にどのように生かされていますか?

同じ会社に就職したので、生かされているというか、普通の新卒よりはいきなりアウトプットを出せていたと思います。あとはインターンシップ中に、ビジネスをしていく上で人との繋がりがすごく大事だなと感じたので、正式に会社に入社した後もコミュニケーションはすごく重要視していました。仕事柄、教えている子どもやそのお父さんお母さん、現地の駐在員とも話すことが多いので、そういう時のコミュニケーションはすごく気を遣うし、大切だと思うから投げやりにはできないなと思います。社員として再出発した時はそういうところに気をつけたかなと思います。

人との繋がりがビジネスチャンスを生む

Importance of relationship among people

今のお話に通じるところがあるかもしれませんが、インターンを通して学んだことや気づきはどういったことがありましたか?

強く実感したのは、人と同じ目線に立つことが本当に大事だなということ。背景を知らずに変なことを言ってしまわないように気をつけるようになりました。それは上司や社長が自分と接するときにもそれを大切にしてくれているし、自分がコーチの立場になると子どもと接するから、子どもと同じ目線に立つっていうのは打ち解けるために大切。なのでコミュニケーションをとる時はそういうことに気をつけています。

あとは、「なんとかなるっしょ精神」は大切だなと思っています。細々考えすぎてもしょうがない。考えることはすごく大事だけど、考えすぎて立ち止まるよりはちょっと考えないで踏み出して行動するくらいがちょうどいい。考えすぎて何もしないで口だけを動かしている人が一番評価されないんだなと思う。その後に何か起きたら、また修正して動けば良いと思います。

例えば、海外インターンに参加すること自体考えすぎて一歩踏み出すのにすごく勇気が必要になる人もいると思いますが、鈴木さんはどうやって一歩踏み出したんですか?

海外インターンに参加する前はシェアハウスで暮らしていて、ルームメイトが一歩踏み出させてくれました。インターンに参加することをためらっていた時、友人に「インターンやってみたいんだよな」とボソッとつぶやいたんです。そうしたら、「やりたいんだったらやってみれば? 連絡するくらいならマイナスもプラスもないじゃん!」って言われて。そうだよなと思って、連絡してみたのをきっかけに海外インターンが始まった。しかも動いてみたら窓口になっていた人が知り合いで笑、向こうも気づいてくれて面白いなと思いました。動いてみれば状況がこういう風に変わるんだなと気づきました。

すごい偶然ですね笑。今までのお話を聞いていると鈴木さんは人との繋がりをすごく大切にされているんだなと感じたのですが、具体的にどういう時に大事だなと思ったのですか?

人との繋がりがあるとビジネスのチャンスが転がり込んでくるし、働きやすくなると思っています。ゼロからやっていく飛び込み営業って大変じゃないですか。でもプライベートで知り合いになっていたら一つハードルが下がると思うんですよ。

インターンの時に飛び込みで飲食店に営業していて、すごく辛かったんです。ゼロからって大変だなって。でも今社員として働いていてシンガポールにある日系の飲食店のコミュニティに入っているんですが、おかげさまでコミュニティの中で顔が広くなっていて、飲食店への営業がすごくしやすい。実際にスポンサーになってくれているところもあったりして、人と繋がっていることって大事だなと実感しています。

自分の価値を高めて次のステップへ

人との繋がりがビジネスにも繋がるし、自分の成果にも繋がるということですね。最後に、鈴木さんは海外インターンを経てインターン先にそのまま就職されましたが、インターンに参加したことで、ご自身で描かれているキャリアロードマップに近づきましたか?

Kenshi's Career Road Map
鈴木さんの、シンガポールでインターンを始めてからのキャリアロードマップ

ヨーロッパのスポーツビジネス業界で働くという目標に近づいているかというのは正直どうかなって思うこともあります。ロードマップ上は横軸(編集者注:目標との距離)には動いてない。経験値っていう縦軸ではすごく上がっていると思う。いろんなことを見ていろんな人と知り合って。ヨーロッパのスポーツビジネス業界で働くためには、次のステップがすごく大事になるかなと思っています。今は下積み時代で、次に行くところがヨーロッパのスポーツビジネス業界に近づく出発点になるのかなって。

来年の春でこの会社に5年いることになる。だから今年は勝負の1年になると考えています。次のステップに向けた動きをしていかなきゃいけない。今までは会社に対して価値を出すことに一生懸命でしたが、今年は自分の価値を高めていく。自分の次のステップに対する決定打を打っていかないといけないなと思う。この1年はロードマップの横に行くような動きをしていくよう頑張らないといけないと思っています。

まとめ

鈴木さんの海外インターンのお話はいかがでしたか。鈴木さんは、海外インターン前は漠然としていた企業選びの基準が、シンガポールでインターンをしたことをきっかけに明確になったと振り返ります。
元々はインターンに参加することをためらっていた鈴木さんでしたが、友人の助言でインターンに参加するという一歩を踏み出すことができました。その一歩を踏み出したことで、どんどん道が開けてきたというのがとても印象に残ります。

海外で働いてみたいという気持ちを持っているみなさん。鈴木さんのように一度一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

鈴木さんの海外インターン通信簿

総合評価 100点
– 海外でスポーツビジネスに携わるという夢を叶えられている
– 海外インターンをしていなかったら今ここにはいないと思うし、新しい経験もできいろんな人たちにも出会えているから
海外インターンシップ先と時期およびその目的 大学4年を休学してシンガポールの日系企業でインターン
海外でサッカーに関わる仕事をしてみたいと思っていたときにたまたま海外インターンを知る
費用 合計40万円程度(当時の為替レート、1SGドル=約65円)
内訳:
– 渡航費6万円
– 食費7万円
– 交通費7万円
– 休学費用20万円
※親からの負担も多少あり
治安や生活 会社のサポートがあり、シンガポールでは心配なかった
言語・コミュニケーション 英語を使わずに価値を出せる仕事では英語は必要なかった
就職活動への影響 企業選びの3つの基準ができた
①現場レベルでサッカーに携われること
②新人でも自由に提案できる組織風土があること
③一緒に働きたいと思える魅力的な人がいること
就職後の影響 ①インターン先に就職したのでアウトプットをいきなり出すことができた
②人との繋がりが仕事を生むのでコミュニケーションをより大切にするようになった
気づきや学び ①人との繋がりがビジネスチャンスに繋がって自分の成果にも繋がる
②考えすぎないで行動してみること

CONPATHでは大学生のうちに海外で長期の経験をしてみたいけれど何が自分に合っているかと迷っている学生のみなさんに、留学・海外インターンを経験した各3名のリアルな体験談を紹介しています。

鈴木さん以外の留学・海外インターン経験者の体験談を読みたい方はこちらからご覧ください。

海外インターンと留学どっちが良い?経験者5人が語るメリット・デメリット

また、鈴木さんには以前シンガポールでインターンをした経験をご自身に綴っていただいています。本インタビュー記事の1年前に執筆していただいたため、本記事とは少し違った視点から海外インターンのメリット・デメリットを確認できるかもしれません。

海外インターンをして、そのまま現地で就職した2つの理由

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