Pioneer Of Uber-like Apps In Cambodia: Mr. Daluch & Ms. Annabel

「成功するか失敗するか悩んでいるなら、まず行動する」 カンボジア初配車サービスの創業者、ダルイ&アンナベル夫婦インタビュー

[:ja]今村[:][:en]Yusuke[:] [:ja]友輔[:][:en]Imamura[:]

by 今村 友輔

Uberに端を発し、その快適さと利便性から今世界中でブームとなっている「タクシー配車サービス」。カンボジアの首都プノンペンでも、5つを超える配車サービスが互いにしのぎを削っています。2016年6月、カンボジア初のタクシー配車サービス「EXNET Taxi Cambodia」(以下EXNET)を設立し、このトレンドの先導を切ったのが一組の若き夫婦、ホー・ダルイさんとアンナベルさんでした。なぜ彼らはカンボジアの配車サービスのパイオニアとなれたのでしょうか? EXNETを立ち上げた経緯とは? その核心に迫ります!

今村:EXNETはカンボジアで初めての配車アプリサービスだと伺っていますが、その詳細を教えてください。

ダルイと共にEXNETを経営する、アンナベル

アンナベル:EXNETはカンボジア初の配車サービスです。
これまでカンボジアには、トゥクトゥクやバイクタクシーといった伝統的な交通手段しかありませんでした。EXNETではスマートフォンの配車アプリを使うことで、タクシーを呼ぶことができます。まず、車種を選択、目的地をアプリ上で指定し、予約をします。配車予約を受け取った近くにいるドライバ―は、アプリのGPSマップをもとに、利用者の現在地まで迎えに行きます。ドライバ―の現在地も常にマップ上に表示されるため、利用者はあと何分でドライバーが迎えにくるのかが分かります。

EXNETは自社で車を所有しておらず、EXNETのアプリに登録したフリーランスのドライバーが、配車サービスを行っています。現在約500人のドライバーがEXNETのアプリに登録しています。ユーザーの大半は外国人で、アプリは現時点で約2,000ダウンロードされています。さらにホットラインを完備して24時間サービスを提供しています。

カンボジア初のタクシー配車サービス「EXNET Taxi Cambodia」

自社のサービスをフリーランスのドライバーに託す中、どのようにサービスの質を維持・向上しているのでしょうか?

アンナベル:フリーランスのドライバーたちを基軸に会社を運営するのはとても大変なことです。それゆえに、私たちはドライバーに正しいアプリの使い方を徹底させるために、厳しいルールを設けています。例えば、あるドライバーがアプリを無視した運賃や、追加料金を請求すれば、ホットラインなどを通じて顧客から苦情が入ります。苦情を受け取った私たちは、そのドライバーにペナルティを与えます。ドライバーたちにルールを破るリスクと顧客への責任を理解してもらうことで、私たちのサービスは高い質を保っています。
したがって、サービスの維持・向上において、利用者からの苦情やフィードバックは必要不可欠なものです。

EXNETを通じて、どのような価値をカンボジア社会に生み出したいですか?

アンナベル:カンボジアに便利で、安全で、手ごろな価格の交通手段を普及させたいです。外国人、特に旅行者にとって毎回トゥクトゥクやバイクタクシーに目的地を伝えて、値段交渉をするのはとても大変なことです。さらに、短距離の移動でも高額な料金を請求されることもあるうえに、英語を話せないトゥクトゥクドライバーも多くいます。
現在、世界各国で革新的なテクノロジーやビジネスモデルが絶えず導入されている中、カンボジアは時代に遅れているのが現状です。私たちは交通分野におけるこの新しい技術・ビジネスモデルを導入することによって、カンボジアの発展に貢献したいと思っています。

確かに、交通分野において、カンボジアは未だ発展の余地が多くありますね。では、EXNETの強みとは何でしょうか?

アンナベル:何よりも、カンボジアにおいて最も早く配車サービスを始めたことです。なぜなら、他の会社が配車サービスを始めた時、既に私たちは多くのドライバーと利用者を獲得していました。さらに、前述したように、私たちのドライバーの大半はアプリの正しい使い方を熟知し、仕事に対する責任を理解しています。

ダルイ:既にいくつかの競合がありますが、私たちはカンボジア国内の配車サービスにおいて最も多くの経験と戦略を持っているからこそ、EXNETはサービスの質・量においても他社より先行しています。

チャンスを見つけたら、逃がさない

ベトナムでUberと出会う

EXNETを設立するまでに、どのようないきさつがあったのでしょうか?

ダルイ:以前、私は海外でメータータクシーの存在を知り、そのビジネスモデルに感銘を受けました。しかし、多くの顧客を獲得できるかもわからない段階で、自分たちで車を集め、ドライバーを雇うのは、とてもお金がかかるうえに、ハイリスクだと考えました。そんな時に、私はベトナムとフィリピンでUberを利用しました。そのシステムの素晴らしさに加え、何よりも運賃が一般のメータータクシーよりも安い、もしくはほぼ同額であることに驚きました。私はカンボジアにはまだ、配車アプリが全く普及していないことを知っていたので、成功するかしないかは置いておいて、このチャンスを逃さないために、帰国後すぐEXNETの設立に取り掛かりました。

アンナベル:EXNETというアイディアや、その他色々な準備など、全てが始動したのは2016年からだったのです。

今でこそ、配車アプリサービスはプノンペンでも流行していますが、どうしてダルイさんは配車サービスのパイオニアとなることができたのでしょうか?

ダルイ:私たちはあえて他社製の配車アプリを採用しています。しかし、私たちにとってアプリは配車サービスのビジネスモデルを実現させる手段でしかありません。またアプリの開発は沢山の資金と時間を必要とします。
EXNETというアイディアを思いついてからすぐにそれを立ち上げたように、私はビジネスにおいて最も大切なことは早く行動を起こすことだと考えています。チャンスを見つけたらすぐに実行に移したことが、カンボジアにおける配車アプリのパイオニアとなれた大きな要因です。
また、EXNETを設立する前に行った「SWOT分析」で、「機会」と「強み」の期待値が、「脅威」、「弱み」よりもはるかに高かったのも要因の一つです。

配車サービスの王者「Uber」にどう立ち向かうのか?

Uberの東南アジア支部代表者が、カンボジアの商業省大臣と会談を済ませたように、遅かれ早かれUberが進出してくると思いますが、どのようにしてこの強敵に対抗していくつもりでしょうか?

アンナベル:現在では、Uberはまだカンボジア市場の調査段階です。あらゆることが不確定ですが、これから起こり得ることに対抗するため今私たちに出来ることは、EXNETのサービスを向上、拡大し続けていくことです。

ダルイ:現時点で、Uberがどのようなサービスをどの規模でカンボジアに導入するかは知りようがありません。実のところ、私はUberの襲来を待ち望んでいます。彼らがどのような戦略を用いてくるのかがわかれば、私たちもそれに効果的な対抗策を講じることができるからです。

ビジネスを成功させる鍵とは?

日本とカンボジアの若い起業家たちに伝えたいことはありますか?

ダルイから読者へのメッセージ「小さな会社で働きなさい」

ダルイ:様々なスキルと知識を身に着けてください。マーケティング・会計・広告・IT・テクノロジー・法律・政治・ 税制など挙げたらきりがありません。たくさんのスキルと知識があればあるほど、起業家として出来ることは多くなります。前に述べたように、ビジネスにおいて早く行動しすぎるということはありません。何かやりたいことが決まったら、タイミングを逃さないように、すぐ実行に移すべきです。
また、起業家になる前に一旦会社で働くことをお勧めします。これには二つに理由があります。

1.優秀な上司を見つけ出し、スキルと知識を吸収する
著名な起業家ジャック・マーが言っていたように、一度に多くの事業・運営に携わることができる小さな会社で働くとなお良いです。
私自身、以前小さな会社に勤めていたので、このアドバイスの正しさを身をもって実感しました。

2.自分自身のビジネスの資金を貯める
私は起業家として、これまで多くのビジネスに関わってきましたが、ビジネスではどんな時でもお金を必要とします。お金はあっという間になくなります。さらに、起業家と並行して、会社で働き続ければ、自身のビジネスのための資金源となります。

アンナベルからのメッセージ「自分の殻から飛び出して」

アンナベル:広い視野を持ってください。時には自分の殻から飛び出して物事を見る必要があります。新しいアイディアは、異なる数種類の観点が合わさることによって誕生します。また、何か新しいものを始める際は多くの障害がつきものですが、最後には、それは大きな強みとなるのです。

ダルイ・ホー(EXNET Taxi Cambodia 創業者&最高経営責任者)

ダルイ・ホー(EXNET Taxi Cambodia 創業者&最高経営責任者)

アメリカ合衆国からの製品輸入コンサルタントとEU圏内からの物品調達・契約専門家も務める。王立法律&経済大学French Cooperation university of Lyon and Lilleのアントレプレナーシップ&プロジェクトマネージャー学部卒業。
2016年6月、カンボジア初の配車サービス「EXNET Taxi Cambodia」を設立。

アンナベル(EXNET Taxi Cambodia経営者)
ダルイ氏の妻、アンナベルはEXNETの経営を担っている。
二人は便利で安全、廉価な交通手段を普及させ、カンボジアの発展に貢献することを目指している。

編集後記

ダルイは冷静で物事を深く考えることができる人物に思えました。しかし、このインタビューを通じて、彼がビジネスにおいて、鋭い洞察力だけでなく、失敗を恐れない思い切りの良さも兼ね備えていることがわかりました。彼の一言一言に説得力があり、筋が通っていました。
さらに、EXNETを設立してもなお、ダルイは常にカンボジア社会に求められている新たなビジネスモデルを探し続けています。
一方、アンナベルはとても温和な女性でした。同時に、ビジネスにおいては堅実な方針を持ち合わせた芯の通った人物である印象を受けました。
ダルイ、アンナベル両者とも社交的でしたが、自分たちのビジネスを通してカンボジア社会をより良くしていきたいという強い熱意が伝わってきました。カンボジアの第一線で活躍するこの夫婦をインタビューできたことは、とても光栄でした。

カンボジア初のUber風タクシー配車サービス「Exnet Taxi Cambodia」を使ってみた

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