カンボジアにオンラインショッピング文化を!eコマース市場の発展を担う連続起業家サラの挑戦

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by 唐 語思

日本では近年お年寄りのために、スーパーのデリバリーサービスが注目されていますが、カンボジアの首都プノンペンでもオンライン注文できるスーパー「Pengpos」がにわかに話題を呼んでいます。

このオンラインスーパー、なんといっても面白いのが創業者のサラ・ウッチ(Sarath Uch、以下サラ)本人が時々デリバリーに出向いて、運が良ければ社長に会えちゃうこと!シリアルアントレプレナーとしていくつもの「カンボジア初」を創り出してきたサラですが、最新の目標はeコマースを通じてカンボジアの近代化に貢献することだそうです。
家族や友人全員に反対されても、諦めるという選択肢は彼の人生に存在しません。支持者が誰もいない中、彼の起業家精神を育んだものはなんだったのでしょうか?

唐: Pengposはオンラインスーパーと伺っていますが、改めてPengposとは何か教えてください。

サラ: Pengposはオンデマンドのオンライン食料雑貨店で、人々の生活を楽にするために立ち上げました。特に子供がいる家庭は送り迎えの際に渋滞に巻き込まれたり疲れやすいので、数回クリックするだけで食料や必要なものすべてが手に入れられるような仕組みを作りたかったんです。私たち自身で契約ショップから最高品質のものを選び、商品を顧客の自宅やオフィスに届けています。

Pengposはオンデマンドのオンラインスーパー - カンボジアにオンラインショッピング文化を!eコマース市場の発展を担う連続起業家サラの挑戦

時々ご自身で商品配達をしていると聞きましたが、なぜこのようなことをしているのですか?

そうなんです。毎日4~5回は自分で配達していて、どこで問題が起こるのか確認して再発を防ぐように対策を取っています。一番多いのはスピードの問題で、カンボジア人はだいたい20~30分後といったように、すぐに商品が届くことを期待するので、今それを解決するために仕事の分担をしようとしています。

オンラインスーパーを思いついたのはご自身の経験から来ているのですか?

そうです。母がいつも家事と仕事の両立で忙しく、せめて仕事後すぐ家に帰れるよう買い物など外にいる時間を減してあげられたらと思って。このアイディアは共同創業者のチャキリア・チア(Chakrya Chea、以下チャキリア)の経験からも来ています。彼女は韓国に留学していたのですが、生活がすごく便利でめったにスーパーに行く必要がなかったんです(単に面倒くさがりだったというのもありますが)。それがカンボジアに帰ってくると、郊外に住んでいたためすべてが大変でした。これはカンボジアの都市に共通することですが、駐車がかなり大きな問題の一つで、チャキリアの場合自分の両親にマーケットまで運転させたがらなくて……。誰も私たちのサービスを使ってくれなくても、何かしらの形で親の助けになれたらという思いはありますね。

お母さんはきっとサラさんのこと誇りに思っているでしょうね!

そんなことないです。起業で成功するには時間がかかるので、よく隣人の子供と比べられました。お隣さんの子供は政府系の仕事をしていて、毎月良い給料をもらって、退職後は年金ももらえるのにお前は……とよく言われました。

そういった環境の中で、何がサラさんのアントレプレナーシップを育んだのでしょうか?

15歳の時からギターを勉強しはじめて、そこから粘り強さを身につけました。家族や友人からギターの才能がないと言われんですが、あの時やめていたら今ギターを弾くことも、楽譜を読むことも、作曲することもできませんでした。兄弟や友人、隣人、周りで支持してくれる人が誰もいなくてとてもがっかりしたけど、YouTubeを見て勉強したりして自分にもできることを証明してやろうと思っていました。自分の中に諦めるという選択肢はなくて、才能が占める割合はほんの少しでそれよりも情熱とコミットメントが大事だと信じています。そして良いことは決してすぐには訪れないことを学びました。Pengposはまだ私たちが理想としているレベルに達していないですが、ギターを通じて学んだ精神をいつも自分の人生にも当てはめています。

才能が占める割合はほんの少し、良いことは決してすぐには訪れない - カンボジアにオンラインショッピング文化を!eコマース市場の発展を担う連続起業家サラの挑戦
“才能が占める割合はほんの少し、良いことは決してすぐには訪れない。”

数年前にウェブ・コンサルの会社を始めましたが、当時Co-working spaceが何なのかもあまり知られていなく、カンボジアでは起業家(アントレプレナー)とビジネスマンは同じものだと思われていました。でも実際は全く違っていて、起業家はイノベーターなのに対しビジネスマンは取引や金儲け重視でイノベーションには興味がありません。そして彼らは失敗に価値を見出さず成功しか信じません。一方で、起業家はすばやくスケールアップできる持続的可能で社会的インパクトをもたらすイノベーションを生み出そうとします。

「外の世界」を知る

先ほどモチベーショングラフを描いてもらいましたが、一人旅を始めたこともサラさんにとっては大きな転機だったようですね。

「外の世界」を知る - カンボジアにオンラインショッピング文化を!eコマース市場の発展を担う連続起業家サラの挑戦

そうですね。18歳の時に初めて一人でタイに旅行に行きました。だいたい親が心配するので、カンボジア人にとって旅行するのは珍しいことなんです。母にはかなり怒られたけど、もうチケット買っちゃったとだけ伝え旅を決行しました笑。幸い、タイでは昔お世話になった英語の先生がいて、泊まる場所は確保できました。バンコクでは駐在員と会う機会がたくさんあって、普通聞けないようなクレイジーな話を聞けて本当に面白かったです。その後ベトナム、フィリピン、マレーシアとシンガポールに行って、世界は広いと思って帰ってきてから自分で旅行会社を立ち上げました。当時は本当に簡単なウェブサイトを作ることぐらいしかできなかったけど、実際に事業を始めてみると顧客コミュニケーションや会計、経理、マーケティングと他にもやらなきゃいけないことがたくさんあることを学びました。だからいつも共同創業の形をとっているんです。
この間三つの会社を立ち上げて、一つ目はソフトウェア系で、二つ目は今も続いているのですがinoover Digital Solution Labという会社でウェブデザインやオンライン広告のサービスを提供しています。その後もっと大きいことをやりたくてSnapyShop*1を立ち上げましたが、この国の市場にとってはまだタイミングが早すぎて、持続的な収入を得られず撤退を決めました。
*1 SnapyShopはスマートフォンでユーザー同士が商品を売り買い、交渉できるオンラインマーケットプレイスです。

様々なビジネスを運営してきた中で、何か共通点はありますか?

私たちのコアバリューは時間通りに最高品質のものを届け、顧客の課題を解決することだと信じています。だからほとんどのサービスがウェブやスマートフォンベースのものになっています。(カンボジアの)ビジネスをオンライン化させることを目標にしています。

オンラインといえば、いつ頃からプログラミングに興味を持ち始めるようになったのですか?そしてなぜそれをビジネスに生かそうと思うようになったのですか?

コードを習い始めたのは11~12歳ごろで、当時はゲームぐらいしか知りませんでした。ある日、いとこにプログラミングの本を見せられて、ゲームも携帯もすべてのものがコードによって成り立っていることを知りました。そこから徐々にコードは世の中のすべてのチャンスの鍵であることを理解するようなっていきました。色々と勉強していくうちにEntrepreneur.comやBusiness Insiderを読むようになり、スタートアップ企業から学び、スタートアップ企業から勇気づけられるようになっていきましたね。

挑戦と将来の展望

これまでに直面してきた最大の課題はなんでしょうか?

一番大きな課題は人々の行動パターンを変えなければならないことです。ほとんどのカンボジア人はネットショッピングをする習慣がなくて、あったとしてもFacebook上で売買するぐらいですね。eコマースについて話そうとすると、Facebook上にお店を開くのか聞かれます。でも私たちはきちんと登記して、プロダクトをeコマースのプラットフォームにしていきたいんです。オンライン支払いや商品検索に関しては、Pengposの方がFacebookでの売買よりももっと信頼性や利便性があると信じていて、今カンボジア人にeコマースについて知ってもらう努力をしています。

最後に、Pengposを通じてどのような世界を創っていきたいですか?

私たちはカンボジア人のライフスタイルを変えようとしています。Facebookもいいけど、みんなが物の売り買いの際に交流できるプラットフォームがあるべきだと信じているので自分たちでそれを作りました。SnapyShopのコンセプトはカンボジアではまだタイミングが早すぎて失敗しましたが、その経験を通じてeコマースがどれだけ素晴らしく興味深いか学びました。一歩ずつだけど、いずれカンボジアでもオンラインショッピングが定着していくと信じています。

サラ・ウッチ(Pengpos共同創業者)

サラ・ウッチ(Pengpos共同創業者)

カンボジアのシリアルアントレプレナーとして知られ、今までにinoover Digital Solution Lab*2, SnapyShop*3、そしてPengposなどを立ち上げている。王立プノンペン大学のコンピューター・サイエンス学科を卒業し、現在国内外のクライアントにオンライン・ソリューションを提供。2016年2月に共同創業者のチャキリア・チアとPengposを設立。Pengposはオンデマンドのオンライン食料雑貨店で、数クリックで顧客が最高品質のものを瞬時に手に入れられるることを目標としている。運が良ければ、Pengposから注文すると社長であるサラ本人がお宅に配達に参りまする?!

*2 inoover Digital Solution Lab (2015年-現在): WEB・モバイル制作会社。国内外の企業、NGOにサービス提供を行っている
*3 SnapyShop (2013-2015年): カンボジア初、唯一のオンラインマーケットプレイスアプリ。ユーザー同士が簡単に売買を行える。

Pengpos

営業時間:10am – 7pm
住所:#17, Street 306, Impact Hub Phnom Penh, Cambodia
電話:+855-95-313-626
HP: www.pengpos.com
Facebook: pengpos.kh

編集後記

サラはとても気配り上手で、オフィスに着いた時飲み物を入れてくれたり、カンボジアでの生活について色々聞いてくれました。一方で、時間感覚や回答の鋭さなど、大企業の経営者から感じられる厳しさのような雰囲気も持ち合わせている人物です。
カンボジアの生活水準を向上させたい有志にとって、サラのプロジェクトに加わることは又とない貴重な経験となることでしょう。Pengposのチームメンバーは性格やキャラクターではなく純スキルベースで選ばれているので、初心者にとっては少々ハードルが高いかもしれませんが、猛スピードで自己成長を遂げられること間違いないでしょう!

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