すべてのカンボジア人にマイホームを。社会起業家コンギーの挑戦

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by 唐 語思

子供の時、レゴで作った家の中で走り回ったり実際に住んでみたいと思ったことはありませんか?そんな子供時代に誰もが一度は夢見たであろうリアル レゴハウスが、実はもうカンボジアに存在していたのです!

Cambodian Dream Home
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今回の主人公コンギー・ハヴ(Kongngy Hav)はカンボジアの農村家庭に生まれ、15歳のときに両親が知人に騙されたことが原因で家庭が財政難に陥ってしまいます。そんな彼は今や欧米からも多大な注目を浴びる泥レンガでレゴそっくりな家を作る“My Dream Home”を立ち上げ、貧しい人でもマイホームが持てるようサポートしています。
このレゴの家、実は通常の二倍以上のスピードで建てられる上、値段は今までより20-40%安く、さらに環境にも優しいのです。
しかしコンギーは建築やエンジニアリングの専攻でもなければ、ビジネスの知識もありませんでした。貧しい家庭に生まれ、社会学と開発学をバックグラウンドに持った彼はいかにしてその大志を貫いたのでしょうか…?!

困難な子供時代、見知らぬ人々の親切、そして自ら住宅価格危機を経験し起業へ

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コンギーの人生は順風満帆には始まりませんでした。カンボジアのコンポントム州に生まれ、6人兄弟のコンギーは15歳の時に深刻な家計難を経験します。「当時、母は一組100-200リエル(約2.5-5円)で洋服を仕立て、自分はお米やバナナ、パパイヤを育てて家計を支えました。カンボジアの文化で、10代の男の子がマーケットで農作物を売るのはとてもきまりが悪いことでした」この家庭環境はコンギーの高校受験の時にも影響を及ぼしたそうです。「同級生がみんな全国統一試験の勉強に集中している時、自分は勉強を続けるために一時間100リエル(約2.5円)で英語を教えなければなりませんでした。家族全員が大きな犠牲を払いました」と、コンギーは振り返ります。幸い、コンギーの勤勉さのおかげで全国試験に合格し、王立プノンペン大学の社会学部に進学できました。
大学時代、コンギーはセーヴ・ザ・チルドレンなどのNGOで働き、卒業後は公的機関や一般企業両方で経験を積みました。コンギーの生活は徐々に良くなっていきましたが、まだヴェンスレン・キャナシティ(Veng Sreng Canacity)という服飾裁縫工場がひしめきあう比較的貧しいエリアに部屋を借りて暮らしていました。そしてここでの経験が、後に社会的底辺にいる人々のために家を作りたいという夢につながっていきました。
「2009年にバイクの事故に遭ってしばらく意識を失いました。深夜で辺りは暗くて静かで、当時事故に遭えばバイクや他の所持品を盗まれてもおかしくありませんでした。ですので、目が覚めた時何もなくなっていないことに気づき大変驚きました。私は5人の工場勤務の女性に助けられ、彼女たちは借り部屋から遠かったにもかかわらず私の家まで送ってくれたのです。彼女たちの生活が苦しいことを知っていたので、自分が7年間NGOで働いた経験を生かしてこの人たちのために何かしてあげたいと思いました」
コンギーが最も気にかかっていたことの一つは工場従業員の劣悪な生活環境で、通常4~5人が一つの狭くて暑い小部屋で暮らしていました。子供時代に自ら辛酸を嘗め尽くしたコンギーはとても心苦しく思っていましたが、この時はまだ具体的に何をすればいいのか分からなかったと言います。
転機が訪れたのは2012年、コンギーは奥さんとオーストラリアのメルボルンで仕事をする機会を手に入れます。ある日、いつものようにyoutubeを見ていると、偶然藁で作る家を紹介するビデオを見つけます。大学で社会学、大学院で開発学を学んだコンギーは常々低所得者のために何かしてあげたいと思いながらも何をすれば良いのか分からなかったと言いますが、この時初めてアイディアが閃いたそうです。

しかし、周りの反対に全く合わずにすんなり成功したという起業家に出会うほうが珍しいでしょう。

「(藁を使って作る家のように、従来の赤れんが以外の素材を使用して)カンボジア人のために手頃な値段で手に入る家を作りたいと200人近くに言いましたが、妻を含め誰も信じてくれませんでした。海外での経験があるのでカンボジアに帰ればいい給料をもらえるのに、おかしいと言われました」
2013年、メルボルンでの生活から1年にしてコンギーは「誰にでも
買える家を作る」という夢を賭けてカンボジアに帰国します。帰国後、この思いは更に強くなっていきました。というのも、コンギーでもまだマイホームを購入できないほど、プノンペンの住宅価格が高騰していたのです。
コンギーは考えました。「自分たちは良い教育を受け、今良い給料をもらえているというのにまだ家が買えない。自分たちよりも貧しい数百万の人々はどうやったら家を買えるのだろうか?」

死ぬまで働いたとしてもマイホームを手に入れられない?!

カンボジアでは近年、地方から都市への出稼ぎ、土地収奪、増加する若い世代のための住宅需要や海外投資などと様々な理由で都市の住宅価格が高騰し大きな問題になっています。
「我々の一人当たりGDPを見ると、年間1200米ドル(月100米ドル)となっています。私が問いたいのは、このラインにいる人たちは毎月50ドルも貯められるのかということです。答えは相当難しいでしょう。国家統計を確認してみたのですが、2008年の時点でプノンペン郊外の住宅でもすでに約42,000ドルかかっています。今、人々が毎月50ドル(年間600ドル)貯められると仮定しましょう。そうすると家を購入できるようになるためには70年間働かなければならない計算になります。しかし、この国の平均寿命は69歳です(2015年時点)。何が言いたいかというと、人々が一生涯、現在もらっている給料を基に働いてもマイホームを手に入れられない現実があるということです」

コンギーを支えた3つの事

My Dream Homeのメンバー
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コンギーはいかにして周りの反対を押しのけ、手頃な値段で買える家を低収入の人々のために作るという夢を実現させたのでしょうか?この「裏話」は、意外にも愉快なものでした。コンギーは奥さんに3ヶ月間だけ自分の夢に向かって挑戦する許可をもらい、この期間中に何も成果を残せなかったら社会起業家になることを諦めると約束しました。コンギーがとった行動とは?ビジネスコンテストに参加し、最優秀賞をもらったのです!

コンギーになぜ自分のアイディアを信じ、どんなに反対されても夢を諦めなかったのか聞いたところ、3つの答えが返ってきました。

1.家庭的背景
「裁縫工場の従業員の生活や勤務環境を見るといつも心が痛みます。自分もとても貧しかったので、彼女たちの生活の大変さがよく分かります。彼女たちは何年も劣悪な環境の中で働いてきたので、より良い生活を送る資格があります。裁縫工場の従業員たちは女性で、家族を養うために送金し、この国の経済を支えています」

2.確信
「我々はyoutubeで藁で家を作る方法を何度も見ました。そして自分たちでも何度も試して成功したのです。だから自分たちにできることを疑うことは全くありませんでした」

3.責任
「このプロジェクトのために会社を辞めてついてきたメンバーが3人いました。彼らのためにも、諦めるわけにはいきません」とコンギーは言います。

コンギーを励ましたことの一つに、あるセミナーで出会った教授の一言がありました――「金儲けは幸せなこと、他人を幸せにすることはもっと幸せなこと。(Making money is happiness, making others happy is super happiness.)」
「現在13人の従業員がおり、全員に最低賃金を上回るお給料を出せているので自分はこれを少し誇りに思っています。私たちに投資してくれている投資家にも儲けさせてあげたいです。でも同時に、リターンよりも社会的インパクトをより重視してほしいです」と語るコンギー。
現在”My Dream Home”にはフランスやイギリスの団体から支援が届いており、今後も世界中からより多くのサポートが寄せられることを期待しています。

「私が一番幸せを感じる時は、家を手に入れられると思っていなかった人々が家を手に入れることです」と、コンギーは笑顔で今回のインタビューを締めくくってくれました。

コンギー・ハヴ

コンギー・ハヴ(My Dream Home共同創業者)

1985年にコンポントム州に生まれる。比較的貧しい家庭的環境だったにもかかわらず、王立プノンペン大学で社会学の学士号を、後に開発学の修士号を習得する。卒業後、セーヴ・ザ・チルドレン・オーストラリアやタイにあるメコン・インシティチュートなどの非営利組織で7年間働く。2012年にオーストラリアのメルボルンに渡り、そこで藁で作る家を知って”My Dream Home”のインスピレーションを得る。
誰にでも買える家をという夢を実現するべく2013年に立ち上げられた”My Dream Home”は、レゴのような凸凹のパーツを組み合わせることによって、従来の赤レンガで建てる家より2倍速く、そして20~40%も安く建てることが可能。レゴブロックの素材に使われているのは、泥土を燃やして作られる”red-claybricks”と呼ばれるもので、二酸化炭素を吸収するなど環境にも優しいため今国際的な注目を集めている。また、レゴのような凸凹の形は接着剤の量を大幅に減らすことにも成功している。

My Dream Home

営業時間:月曜日〜金曜日 (8am〜5pm)
住所:#17, Street 306, Impact Hub Phnom Penh, Cambodia
電話:+855-77-446-179
HP: www.ourdreamhomes.biz
Facebook: mydreamhomekh

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